【第3回】留学ビザから就労ビザへ変更手引き-事前調査② 学歴と職種のマッチング編-
留学ビザから就労ビザへ変更についての手引き(第3回)です。
今回は
『学歴と職種のマッチング』
についてご説明いたします。
外国人留学生を採用するときは、職種と学歴がマッチしていることが大切です。
なぜなら職種と学歴がかけ離れていると、就労ビザの許可が下りないからです。
在留資格変更許可の許可率を上げるにはこの調査が欠かせません。
調査をすることによって
雇用したい外国人が御社にとって“必要な人材”であること
を客観的な視点で入国管理局に説明できるようになります。
目次
就労ビザの大前提
外国人留学生が卒業後に日本国内でフルタイム労働をするには在留資格を変更する必要があります。
その多くは『技術・人文知識・国際業務ビザ』への変更です。
そして『技術・人文知識・国際業務ビザ』で在留中は
単純労働ができません。
いわゆるホワイトカラーの職種しか就くことができない決まりになっています。
ホワイトカラーの職種とは?
『技術・人文知識・国際業務ビザ』とはいわゆるホワイトカラー職種向けのビザです。
具体的な職種を挙げると
システムエンジニア、建築設計、企画、財務、マーケティング、通訳・翻訳業務、貿易、海外取引業務、民間の語学スクールの講師、服飾インテリアデザイナー
などです。
単純労働とみなされれば許可がおりないので、そのことを前提として考える必要があります。
『日本人の配偶者等』などの身分に基づく在留資格は日本人と同じように働くことができます。就労に制限はありません。
技術・人文知識・国際業務ビザの要件
技術・人文知識・国際業務ビザには学歴または実務要件があります。
この要件を満たしていないとビザを取得することができません。
学歴と実務の2つの要件あります。
しかし両方を満たしている必要はなく、どちらかを満たしていればOKです。
①学歴要件
従事しようとする業務に関連する科目を専攻して大学を卒業していること
又はこれと同等の教育を受けたこと
留学生を採用する場合なので、学歴要件を満たしていれば大丈夫です。
②実務要件
従事しようとする業務について10年以上の実務経験があり、その知識を習得していること
大学を卒業した場合(学士号)
学歴の要件では
従事しようとする業務に関連する科目を専攻して大学を卒業していること
又はこれと同等の教育を受けたこと
とあります。
しかし大卒に関しては平成29年度から少し事情が変わってきています。
大卒は柔軟に審査されるようになった。
現代の企業では広い範囲の知識が要求される業務に就くことが多いです。
大学における専攻科目と就職先における業務内容の関連性を柔軟に考えなければ、
必要な人材を確保することができなくなってしまいます。
そのため、従事する業務と学歴の関連性についてそれほど厳密に要求されなくなりました。
詳しくは法務省:留学生の在留資格「技術・人文知識・国際業務」への変更許可のガイドラインをご参考ください。
しかし関連がないとみなされると許可が下りません。
許可する理由として『その人でなければならない理由』が必要です。
この辺りのことをどうやって説明するか?
それが許可が下りるかどうかのポイントになります。
厳密ではなくなった=許可されやすくなった
ではありません。
審査が柔軟になった分、よりしっかりとした理由が必要になったのです。
単純労働をする予定があるときは
先にも書きましたが『技術・人文知識・国際業務ビザ』で在留中は単純労働ができません。
とは言っても、採用後にいきなり高度な仕事を任せられるかといったら、そうとも言い切れません。
“現場で経験を積む”ということも大切です。
ヒント!小売業の場合
例えばドラッグストアやスーパーを例に考えてみます。
入社後数年は実店舗で店舗の運営を経験するというのは日本人であっても十分にありえます。
しかし外国人の場合、
その後に本社で勤務を予定するといったケースなら、単純労働を行わせるために採用するものではないということをビザの申請時に説明しておかなければいけません。
留学生が学生時代に学んだことを
- どのように会社に生かそうとしているのか
- 店舗での勤務がその目的と一致しているか
このようなことを書面にして提出します。
もちろんですが、“今、許可だけ下りればよい”と考えるのはダメです。
大卒で不許可の事例
ホテルにおいて,予約管理,通訳業務を行うフロントスタッフとして採用され,入社当初は,研修の一環として,1年間は,レストランでの配膳業務,客室清掃業務にも従事するとして申請があったが,当該ホテルにおいて過去に同様の理由で採用された外国人が,当初の研修予定を大幅に超え,引き続き在留資格該当性のない,レストランでの配膳業務,客室清掃等に従事していることが判明し不許可となったもの。
留学生の在留資格「技術・人文知識・国際業務」への変更許可のガイドライン
この事例からもわかるように、今後雇用していく予定がある場合は、より慎重になる必要があります。
一度このような過去事例を出すと、次回はむずかしくなります。
日本の専門学校を卒業した場合(専門士)
外国人留学生が日本の国内の専門学校を卒業した場合「専門士」となります。
専門学校のうち、修業年限が2年以上等の要件を満たしたもので、文部科学大臣が指定した課程の修了者は、専門士の称号が付与されることになっています。
専門士は就労ビザを取得できる職種が限定されています。
大卒がある程度の柔軟性をもって審査してもらえるのに対し、専門士は職種が限定されます。
入社後に担当する職務と専門学校で専攻した科目が完全に一致していることが就労ビザ取得の絶対条件であり、例外はありません。
大学卒業者以上に注意深く確認した上で採用することが重要です。
専門卒で不許可の事例
国際情報ビジネス科を卒業した者から,本邦の中古電子製品の輸出・販売等を業務内容とする企業との契約に基づき,月額18万円の報酬を受けて,電子製品のチェックと修理に関する業務に従事するとして申請があったが,その具体的な内容は,パソコン等のデータ保存,バックアップの作成,ハードウェアの部品交換等であり,当該業務は自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とするもとのは認められず,「技術・人文知識・国際業務」に該当しないため不許可となったもの。
留学生の在留資格「技術・人文知識・国際業務」への変更許可のガイドライン
通訳・翻訳業務は例外
例外として通訳・翻訳業務があります。
通訳・翻訳業務は『技術・人文知識・国際業務』のうち『国際業務』にあたります。
『国際業務』を行う場合は原則的に同様の業務に関する3年以上の職務経験が必要です。
しかし『国際業務』には特例があります。
語学指導においては職務経験がなくても就くことができる場合があります。
職務経験が必要ない人
- 学士以上の新卒者
- 既卒(学士以上)の転職者
上記の方を雇用する場合は、同様の業務に関する3年以上の職務経験は必要ありません。
また大学で専攻した科目と職務の関連性の条件も適用されません。
つまり通訳・翻訳・語学指導業務については、理系文系どのような学科であっても、学士号以上の学位を持っていれば就労ビザは取得できます。
日本の専門学校を卒業した専門士の場合は?
専門士の学歴を持つ外国人を通訳翻訳業務専任で雇用する場合。
専門学校で専攻した科目が日本語通訳学科である必要はありません。
以下の条件を満たせば就労ビザは取得が可能です。
母国で母国語と日本語の通訳業務の職務経験が3年以上ある外国人
※通訳用語でフルタイム勤務の就労経験が必要。
※短時間短期間アルバイトなどの副業程度では認められません。
日本の専門学校に入学し、通訳業務に全く関係のない分野の専攻をしていた場合であっても、
通訳の職務経験が3年以上の条件を満たしている場合は技術人文知識を申請して許可される可能性があります
まとめ -第3回はここまで-
学歴と職種のマッチングについて、簡単にまとめるとポイントは以下の通りです。
- 単純労働はできないこと
- 大卒は柔軟に審査されること
- 専門卒は職種と学歴が完全に一致していること
- 翻訳・通訳は例外がある
- その外国人でなければならない理由が必要
学歴と職種のマッチング説明することは意外と難しいです。
特にその外国人でなければならない理由です。
慣れないと難しいのが本当のところです。
就労ビザの申請は本人か雇用する会社、あるいは取次申請者が行うことになっていますが、
実際には取次申請者が圧倒的に多いでしょう。
この面倒さとはっきりとした指標のなさゆえ、のことかもしれません。
さて第3回は
留学ビザから就労ビザへ変更手引き-事前調査② 学歴と職種のマッチング編-
でした。
学歴と職種のマッチング調査を完了し、
就労ビサが下りる!
と判断したらいよいよ在留資格変更許可申請を行います。
ですが、その前に雇用契約書を交わしてください。
雇用契約書は労使双方が合意した取り交わし文書です。
これは雇用後のトラブルを避けるため、にとても重要な作業です。
次回は
【第4回】留学ビザから就労ビザへ変更手引き-雇用契約書の作成(ダウンロード付き)編-
です。
効果的な雇用契約書作成のためのポイントをまとめてあります。