【第4回】留学ビザから就労ビザへ変更手引き-雇用契約書の作成(ダウンロード付き)編-

【第4回】留学ビザから就労ビザへ変更手引き-雇用契約書の書き方と注意点編-

留学ビザから就労ビザへ変更についての手引き(第4回)です。
今回は

『雇用契約書の作成』

についてご説明いたします。

雇用契約書とは『契約書を作成し双方同意の上契約を取り交わすこと』です。
雇用契約書を作成する理由は2つあります。

  1. 雇用後のトラブル防止
  2. 入国管理局に提出する書類としても活用

1は『言った言わない』などの雇用条件に関するトラブルを避けるため、2は 雇用条件を立証する資料として活用するため、です。
※雇用条件を示すことは雇用主の義務とされています。

そのため、雇用の契約を交わすベストタイミングは就労ビザ申請前ということになります。

トラブル防止!雇用契約書を作成しよう。

「だいたい給料は○○円です」

極端な例ですが、このような雇用条件の示し方はトラブルの元です。
決まり事はしっかりと書面にして提示します。

外国人は契約社会で暮らしています。
雇用したい意思があるのならば、必ず最初に雇用条件を示し労使双方で合意することが重要です。

雇用条件を立証する資料としても活用

就労ビザの申請には雇用条件を立証する資料が必要です。
雇用条件を立証するには労働条件通知書でも可能ですが、 あわせて雇用契約書を使うことをお勧めしています。

Memo 雇用契約書とは?

雇用契約書は書面に双方の署名捺印をして2通の原本を作成します。
そしてそれぞれ1通ずつの原本を保管しておく契約書です。

Memo 労働条件通知書とは?

労働条件を書面で配布することです。労働基準法で配布することが義務付けられいます。

労働条件通知書でも雇用条件は立証することができます。
ではなぜ労働条件通知書ではなく、 雇用契約書で立証することをおすすめするのでしょうか?
答えは通知と契約の違いにあります。

雇用条件にお互いの同意があるかどうか?です。

労使双方の合意があるのは「契約書」

労働条件通知書はあくまで「通知書」であり、労働条件を一方的にお知らせしたものです。
書面にして外国人に渡していたとしても、場合によっては外国人が理解していないことも考えられます。

それに対して雇用契約書は労使双方の署名捺印があります。
つまり労働条件について雇用主と労働者が合意した証明書として有効なのです。

双方の合意がないとこんなことになる!?

相手にちゃんと伝わっていないと、ビザ就労ビザを申請する段階になって

「こんな労働条件では働けない」

という事態になることも…

日本で働けることになり喜んでいたのに、蓋を開けてみればこんな安い賃金だった。
これではとうてい無理だというわけです。

また働き始めてからも

「聞いていた賃金と違う」
「正社員での採用だと思っていた」

など、認識の違いが原因でトラブルが発生します。
これらは決して珍しいことではなく、外国人雇用あるある』です。
契約書がなければ、後でどのようにも言うことができます。

『契約書がない』ということは

雇用主側にとって不利に働く

と思って間違いではないのです。

雇用契約書作成のためのポイント

外国人労働者は比較的契約に関する意識が強い傾向があります。
契約書で契約していない業務内容については、その業務を行う義務はないと考えるのが普通です。

そのため外国人には日本人に労働条件を明示するよりも、より詳細に書面により労働条件を伝える必要があります。
自社独自の業務内容やルールがあるのなら、別紙でまとめるなど詳細に説明しておきます。

それから大切なことがもうひとつ。

できれば外国人の母国語であることが望ましいです。

労働条件の明示事項を知ろう!

労働条件の明示には

  1. 必ず明示する事項
  2. 定めをした場合に明示しなければならない事項

の2つがあります。
まずはそれぞれを記載しますので、どういった内容かを確認してみてください。

①必ず明示する事項

  1. 労働契約の期間に関する事項
  2. 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
  3. 就業の場所、従事すべき業務に関する事項
  4. 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働(早出・残業等)の有無、休憩時間、休日、休暇、 労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
  5. 賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締切・支払の時期に関する事項
  6. 退職に関する事項(解雇の自由も含む)
  7. 昇給に関する事項

※ただし②は更新する場合のある有期労働契約を締結する場合に限られます。
①から⑥については書面の交付をもって明示することが定められています。

必ず明示する事項は基本になる部分、といった感じです。
すでに決まっていることが多いと思います。

②定めをした場合に明示しなければならない事項

  1. 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定・計算・支払いの方法・支払の時期に関する事項
  2. 臨時に支払われる賃金・賞与等、最低賃金額に関する事項
  3. 労働者に負担させるべき食費、作業用品などに関する事項
  4. 安全、衛生に関する事項
  5. 職業訓練に関する事項
  6. 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
  7. 休職に関する事項

定めをした場合に明示しなければならない事項は、自社のオリジナルルールに近い内容です。
といっても上記に記載した内容などは基本的なことです。
書面で提示しておいたほうがよいでしょう。

トラブルになりやすい事項はより明確に

トラブルになりやすい事項とはどんなものでしょうか?
もっとも代表的な一例を挙げておきます。

  1. 正社員なのか有期契約なのか?
  2. 契約の更新の条件は?
  3. 賃金はいくら?
  4. 労働時間は?

などです。
例えば雇用期間についてはこんな内容です。

例)雇用期間に関するトラブル

雇用期間のある契約の場合

いつからいつまで雇用するのか、その期間です。

期間の定めのある労働契約の場合には、労働契約期間に加えて労働契約を更新する場合の基準についても記載する必要があります。

分かりやすい例でいえば

ビザの更新が可能であった場合のみ、契約の更新が可能である。

といった条文です。
外国人は就労ビザが許可または更新されなくては働くことができません。
当然と言えば当然のことですが、こういったこともしっかりと記載しておく必要があるでしょう。

Memo:継続して5年超は、希望により無期雇用に

平成25年(2013)年4月1日の労働契約法改正により、同一の使用者等との間で有期労働契約の契約期間を通算した期間が5年を超えた場合は、労働者の申し込みにより、無期労働契約へ転換することとなりました。

雇用期間のない契約の場合

有期労働契約を更新しないことを最初から明らかな場合には契約を更新しない旨を明示すればOKです。
更新の基準の明示義務はありません。

雇用契約書のサンプルはこちら

雇用契約書のサンプル

雇用契約書のサンプルをダウンロードできます。

厚生労働省の労働条件通知書がベースになっています。
このままの使用でも問題ありませんが、御社独自の決まりなどがありましたら追記や修正を行ってください。

まとめ -第4回はここまで-

このページでは雇用契約書についてをご説明いたしました。

雇用契約書を作ることでもっとも大切なことは

労使双方の同意

です。

簡単にまとめると以下の通りです。

  1. 雇用契約書とは労使双方に同意があることの証明書となる
  2. 在留資格変更許可申請を行う前に契約する
  3. 雇用条件の立証に使用できる
  4. 必ず明示しなければならない事項が決まっている
  5. トラブルになりそうなことはより明確に

内容自体はさほどむずかしいことはありません。

雇用契約を交わしたら、次はいよいよ在留資格変更許可申請です。

次回は

【第5回】留学ビザから就労ビザへ変更手引き-在留資格変更許可申請編-

です。

企業側が準備・用意することがたくさんあります。

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